寝返りは誰もが睡眠中に無意識に行っているもので、それは妊娠中でも変わりません。特に大きなお腹で内蔵を圧迫される妊娠後期では、その寝苦しさから回数が増えるといわれています。
妊娠中の寝返りというと「お腹の赤ちゃんにへその緒が巻き付いてしまうかもしれない」「逆子になりやすくなるかも!?」と、不安に思う妊婦さんも少なくないはずです。
寝返りを意識して止めることはできませんが、赤ちゃんのために気をつけられる点はあります。そこで今回は、妊娠中のママの寝返りについてお話ししていきます。
目次
そもそも、どうして寝返りをするの?
そもそも寝返りとは、なぜおきているのでしょうか。
血流の改善
人が一晩のうちに10~20回もうつとされる寝返りは、健康と睡眠の質にとって重要な役割をもっており、なかでも血流に大きな関わりがあります。寝返りで姿勢を変えないと、血流のとどこおりからくる不調や不快感により、睡眠の質が低下してしまうのです。
体温調節
また寝返りは体温調節の役割も担っています。睡眠中に布団と接している部分は体温が上がりやすく、汗ばみますよね。寝返りによって布団と体のあいだの風通しがよくなると、密着した部分の熱や汗を発散できるのです。
体の歪みの改善
そのほか、体の歪みを改善する働きもあると考えられています。
このように、快適な睡眠と体の調整のために、寝返りは欠かせないものなのです。
妊娠中のママの寝返りとお腹の赤ちゃん
先ほども少しふれたように、妊娠してお腹が大きくなってくると寝返りの回数は増加し、倍以上になることも少なくありません。ではそのとき、お腹の赤ちゃんはどのような状態になっているのでしょうか?
羊水があるから大丈夫
赤ちゃんは、たっぷりと羊水で満たされた子宮の中にいます。そしてその空間には赤ちゃんが自由に動きまわれるくらいの余裕があり、クッションとなる羊水には弾力性があります。
そのためママが寝返りをうったからといって、赤ちゃんの首にへその緒が巻きついたり逆子になるといった心配はほとんどありません。
ですが、時期によっては注意が必要となります。妊娠後期になると、赤ちゃんの成長とともに子宮はさらに大きくなり、ママの内蔵を圧迫するようになります。
その不快感からの寝返りでお腹を強く打ちつけてしまったり、無理な姿勢で胎盤が衝撃を受けると、常位胎盤早期剥離などの危険につながるおそれもあります。
とはいえ、先ほども紹介したように寝返りは健康や睡眠の質に関わるものなので、無理に止めたり我慢するわけにはいきません。
また血流がとどこおれば、逆に胎盤へのダメージとなります。なるべくお腹に負担をかけず、ラクに寝返りがうてるよう工夫していきましょう。
妊娠後期になると寝返りが痛いと感じることも?
臨月が近づくとお腹も大きく前方に突き出してくるため、寝返りがいっそう困難に感じるようになるでしょう。
また短時間のうつ伏せでも苦しく感じ、普段より寝返りのバリエーションも減ってしまいます。さらに安定する睡眠姿勢を見つけづらく、少し動くにも大きな労力が必要になってきます。
無理にいきなり全身で寝返りするのではなく、徐々に寝返りの準備を整えていくように意識してみて下さいね。
寝返りでお腹が張る!?
寝返りによってお腹の張りを感じることもありますが、多くの場合が仰向けの姿勢が原因となって引きおこされたものです。妊婦さんが仰向けになると子宮が背中側に沈みこみ、周辺の筋肉や皮膚が引っ張られた状態になるからです。
また日常生活では気付きにくいささいなお腹の張りが、横になったときに急な自覚症状となることもあるでしょう。そうした場合は寝返りがきっかけだと錯覚してしまいがちです。
一時的な張りであれば問題ありませんが、いくら安静にしていても続く場合には、かかりつけの産婦人科に相談してくださいね。
ママが寝る向きによって赤ちゃんが危険になることも!
妊娠後期の妊婦さんは、仰向けではなく横向きに寝ることが多くなるものです。このときに右を下にするか左を下にするかで、死産や胎児仮死の発症率が変わります。
この差は血流に関係しており、ママが身体の右側を下にして横向きで寝た場合、大きくなった子宮が下大静脈を圧迫します。すると心臓への静脈還流量が減少してしまうので心拍出量も減り、低血圧になってしまいます。
ママが低血圧になると赤ちゃんや胎盤に流れる子宮血流量も減ってしまうのです。これが胎児仮死といわれる、胎児機能不全や胎盤機能不全の原因となって死産につながってしまうのです。
夜中に寝返りをうって目覚めた時に、自分が右側を下にしていたら左向きの姿勢を直すようにしましょう。
寝返りは妊婦さんにとっても大切!
死産のリスクもあると紹介しましたが、妊婦さんにとっても、寝返りは普段と変わらずとても大切です。
妊娠すると通常よりも体重が増加し、腰に負担がかかることもあります。これは睡眠中においても同様で、大きなお腹で太い血管が長時間圧迫されると血流がとどこおり、寝る姿勢によっては腰痛を招く可能性があるのです。
しかし適度な寝返りにより腰やその周囲にある筋肉への負担を軽減することも可能ですし、長時間の同一姿勢を避けることもできます。
赤ちゃんのリスクを減らす眠り方とは?
赤ちゃんのリスクを減らすためにも妊婦さんにおすすめなのが、シムス体位です。
シムス体位とは19世紀にイギリスの産婦人科医である、J・マリオン・シムズ先生が提唱したもので、身体の左側を下にして横向きになるという寝方です。
シムス体位で眠ると、子宮の後ろにある下大静脈が圧迫されず、体の不調を感じにくくなると言われています。
まずはお腹に負担をかけないよう、少しだけうつぶせに近い姿勢を意識してください。そして左手と左足を後ろに少し曲げ、反対に右手と右足は前に曲げるようにします。
身体全体で使えるような細長いクッションや抱き枕を足の間に挟むと、シムス体位になりやすいです。
ただし人によってはシムス体位を取ると、下側の肩や腕に体重がかかり痛くなることがあります。これを防ぐには
- 敷布団を柔らかめのものにする
- 低反発マットを入れる
などの対策がお勧めです。
シムス体位も長時間続けると身体の負担となるので、他の姿勢への寝返りも適度に行いましょう。
眠る時の姿勢も変えて、寝返りで赤ちゃんに負担をかけない!
妊娠中のママの寝返りがすべて、お腹の赤ちゃんに悪影響を及ぼすわけではありません。ですが胎盤に負担をかける寝方は危険につながる可能性もあるので、できる限り避けたいところです。
妊娠後期に入ったらシムス体位で眠るようにするなど、寝返りの回数を減らし、お腹の赤ちゃんにやさしい眠り方を心がけていきましょう。